人気ブログランキング | 話題のタグを見る

このブロウは社会学かぶれの自分が、日々過ごす中で感じた事、読んだ物、多々ある中、適当に思った事をちょっと社会学的に見てみようか、程度のブログです。


by gsocio

「W.」

「W.」_f0192765_7205160.jpgオリバー・ストーン監督の「W.」はブッシュ大統領(以降W.)に対して批判的な映画を見たい人には少し物足らない映画かもしれない。しかしながらブッシュ大統領を語る上で見ておく価値のある映画ではある。監督はこの映画を「人々はこの映画が優しさに満ちている事に驚くだろうと」語っている。私もそう思う。なぜなら映画を見終わった後に、あのブッシュ大統領に対してシンポシーを少なからず抱かずには居られなかったからだ。いや、ブッシュ大統領ではなくW.に。

ストーン監督はW.と同様にイエール大学に入学している。その理由も似ていて、W.は父の命を受けて政治家になる為にイエールに送り込まれ、ストーン監督も証券マンの父に将来ビジネスで成功する為にイエールに送り込まれた。しかしストーン監督はそんな環境が嫌になりベトナムへ行ったが、W.は嫌々ながらも父の言う事を聞きイエールに残りベトナムに召集されない為に州軍に入隊した。ベトナムが二人の分かれ道とストーン監督は語っている。ストーン監督は「ニクソン」ではニクソン大統領を自分の父親と重ね合わせて描いていた。「W.」ではベトナムに行かなかった自分をW.と重ね合わせて描いている。もしベトナムに行っていなかったら、自分はどの様に成っていただろうと。

この映画で注目すべきはやはりW.と父である前大統領の関係であろう。政治家になる為にイエールに送り込まれたと言えば聞こえは良いかも知れないが、ブッシュ家に置いて、長男でありながら素行の悪さからW.は一族内で厄介者扱いされていた。偉大な父親を越えようと反発はするも、偉大すぎて超えられない為に従順するしかない。そして父に期待を寄せられている弟の存在。

1994年のテキサス州の知事選に周りの反対を押し切って打って出る。ブッシュ家は時を同じくしてフロリダ州知事選に出馬した弟のジョブ・ブッシュの応援に忙しくW.を応援する余裕は無いと言われるが、しかしW.は出馬し見事当選する。この時から彼の中で自分と父との関係と政治とを重ね合わせて見る様になって行く。もしかすると、前年に父の大統領二期目を掛けた選挙での敗北を見て、弱い父を見てしまった時からかもしれない。

ブッシュ大統領が大統領に就任以後、周知の通りアメリカの政治状況は今までに無いほど複雑化して行く、そんな中でブッシュ大統領はこの大きな問題を父と子の間の個人的問題として捉えてしまい、自分を含めた全世界の状況を悪化させて行く事になる。

別にブッシュ大統領を擁護する訳ではないが、彼の置かれた状況は同情に値するし、彼の人間性に引かれる所もある。そう思わせるのは、やはりこの映画の優しさなのかもしれない。

最後に、もしブッシュ大統領がストーン監督と同様に自分の置かれた環境が嫌になりベトナムに行っていたら彼の人生は、アメリカ大統領にまで上り詰めても不幸な人生ではなく、もっと違った物に成っていたかもしれないと、私は思った。

まあ、オススメの映画です。
by gsocio | 2008-10-18 07:25 | 映画の批評